日本昔ばなし サイバーテロ
富士山も初冠雪が観測されたそうだ。季節は、足早に冬に向けての準備を進めているようだ。今年の長期予報では暖冬といっていたけれども、冬に向かう足音は早まっているというのが実感だ。はたして、暖冬なのか厳寒の冬となるのか、予断を許さない状況だな。
論語、論語、談合・・・あっ、言い間違えた。
Long Long Ago そう、昔むかし日の国にサナエ婆さんがいたそうな。
サイバー攻撃が懸念される中、サナエ婆さんは攻撃元のサーバーへ入り込んで無力化する措置を10月1日から可能にすることを決定した。そして、2027年からは全面導入をするべく準備を加速させていた。
その発表を受けて、C国の悪意あるサイバーテロ達は、日の国の「能動的サイバー防御」がどの程度になるのかを探るために、10月の声を聴くと一斉に日の国にサイバー攻撃をかけてきた。その数は未曽有のものであり、日の国の多数の企業からは個人情報が漏洩する事態へと追い込まれることになった。
多くの企業は個人情報である、個人名やメールアドレスとパスワードが漏洩される被害にあった。しかし、Gという会社はあまりにもシステムが脆弱じゃったため、取引手数料という手段を使うて顧客の資産をゼロにするという企業の信用に関わる被害を被った。もっとも、G社はシステムの脆弱性を社員から指摘されていたにもかかわらず、コストの問題としてシステム改善をしなかったのだから、自業自得とも言えたんじゃ。
ミサイルやら弾丸を用いることなく、その国の安全神話を崩壊させていくという点では、まさにC国からの戦争ともいえるもんじゃった。日の国では、このサイバーテロの直面して「サイバーセキュリティに関する閣僚会議」をおっとり刀で開催して論議する有様じゃった。企業からは、早急に能動的サイバー防御実施の要請があったにもかかわらずじゃ。
しかも、官房長官木原イエスマンは「要請ではなくそれぞれの法律要件により実行する。」と即座の防御実施には否定的じゃったんじゃ。なんせ、サナエ婆さんのスタンドプレーで「能動的サイバー防御」の実施を謳ったものの、その実態はまだありもしない張りボテでしかなかったからじゃ。政府としては、なんとか時間稼ぎをしながら能動的サイバー防御を実施できるように体裁を整えようとしておったんじゃ。
いつものことながら、サナエ婆さんは口ではキャッチーなことをいうモノの、その実、具体的な中身は全く伴わないものでしかない。今回のサイバー攻撃も、サナエ婆さんがスタンドプレーさえしておらなんだら起りはしなかったもので、いわば人災みたいなもんじゃ。今できることは、なんとか時間稼ぎをしながら、この国で有能といわれるシステムエンジニアに1週間の間に能動的サイバー防御を完成させるしかのうなったんじゃわ。
秘密裏に集められた年齢層の幅広い有能と言われるシステムエンジニアたちは、それこそ1週間の間不眠不休でシステム構築を強いられることになった。少々の粗さはあろうとも、今ここにある危機を回避するため、というかサナエ婆さんのプライドと見栄のために、不眠不休で仕事をさせられた。しかも、決して口外しないこと、墓場までこの事実を持っていくことを条件としてじゃった。
サナエ婆さんは、この事態をなんとか抑えればすぐさまには攻撃はないだろうから、その間に再度「能動的サイバー防御」のシステムを構築させればよいと安穏と考えておったんじゃ。とにかく、裏で秘密裏に突貫工事的に作業をしていることさえバレなければ良いというサナエ婆さん独特の思考がそこにはあったんじゃ。
しかし、サイバーテロ達は性悪さはサナエ婆さんさえも上回っておった。1週間の会議を開催したと知った途端に、その意味を理解したんじゃ。時間的な猶予が必要ということは、日の国には「能動的サイバー防御」システムがないということを。そして、この1週間のサイバー攻撃はこれまで以上に激しさを増していった。政府系のサイバーはもとより、インフラにかかるサーバー、治安に関わる警察関係へのサーバ、さらには国民の財産の基盤となる金融機関のサーバーと日に日に攻撃の手は強まっていった。
「サイバーセキュリティに関する閣僚会議」を開催しいてた1週間、サナエ婆さんは何もできることはないままじゃった。とにかく、言い繕うための言葉を探すのに必死で、寝ることはおろか、化粧する暇もないまま会見をするほかなかったんじゃ。そこで言うたことは、
サナエ婆さん「日の国の能動的サイバー防御を本日発動しました。」
記者たち「オオッ~、ついて能動的サイバー防御の発動ですか。で、詳細について・・・」
サナエ婆さん「詳細については、今後の安全保障上の問題もあるので控えます。国民の皆様、現状ではネットを介することは非常に危険だと判断しました。日の国は、本日より、ネット鎖国を宣言することにした。これからは、ネットは国の管理するサイバーに接続することで、海外からの悪意あるサイバー攻撃にさらされないようにします。日の国の管理するサーバーには幾重にもファイアーウォールを建てて、皆様の個人情報を漏洩したり、安全を脅かすサイバーテロの攻撃が及ばない、さながら厳重な城砦の中にいるようになるものです。」
この宣言はデジタル社会における敗北宣言ともいえるものじゃた。悪意のあるハッカーを寄せ付けず、その代わりテクノロジーの進歩からも隔絶された箱庭の中で、旧態依然としたまま生きながらえるということなんじゃ。もはや世界から隔絶されたガラパゴスのようになっていくことを意味しておった。システムエンジニアも、隔絶された温室の中で技術革新とは程遠いまま、進化の過程にも目を瞑ることを余儀なくされてしもうた。最早、サナエ婆さんのお花畑の中で生きていくようなもんじゃ。そこには、旧態依然とした価値観しかなく、進歩への理解のない閉塞感に満ち溢れた空間が残っておるだけじゃった。
日の国は、あたかも巨大なイントラの中でネット社会を継続しようとしたのじゃ。これも、とても1週間では能動的サイバー防御のシステムはでけんことなど、ハナからわかっておった。時間稼ぎをする中で巨大なイントラを作り上げ、企業にこのイントラの中でのみ情報アクセスできるように要請した結果じゃった。このことにより、たしかに悪意のあるサイバーテロから身を防ぐことは出来るようになったものの、自由な情報を求めるということは出来なくなった。なんせ、日の国の管理するネットという名の牢獄の中で、デジタル生活を送ることしか手がないのじゃ。国の管理以外の経路でネットにつなぐことはテロと同様とみなされ、処罰が待っている社会じゃった。政府は情報管理の重要性を唱えながら、個人情報を逐一抜き取り、情報統制が行われる始末じゃった。もはや、個人の情報は国に一元管理され、日の国の意にそぐわぬ意見を言うモノはデジタルテロの遂行者として逮捕される始末じゃった。当然、みんなは口をつぐんで政府の顔色しか見ない、統制社会の中で息苦しい生活を強いられたそうじゃ。
サナエ婆さんが己のプライドと見栄と業績をたたえてもらいたいがために、できてもおらん‘‘攻撃元へのサイバー無力化策’’を声高に言わなんだら、こんなに息苦しい社会にはならなんだのにのう。いつも、いつも威勢のいい掛け声だけを発するリーダーには十分気を付けなされや、くわばら、くわばら。






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