せかい昔話 横やりジィさま
各地で35度を超える気温となっている。本格的な夏の暑さに身体が慣れていないせいなのか、少しの暑さでもとてもこたえる。はやく、この暑さに慣れてくれないと、疲ればかりがたまってしまいそうだ。今年の夏も、きっと暑い日々がながくつづくんだろうなぁ。
論語、論語、過去・・・あっ、言い間違えた。
Long Long Ago そう、昔むかし白い家村にトラちゃんという背の高いジィさまがいたそうな。
トラちゃんは、その昔の”ドラえもん”に出てくる”ジャイアン”を生き写しにしたような性格だったそうじゃ。なんせ、自分のモノは自分のモノ。欲しいものは他人のモノでも自分のモノといいはる、とても困ったジィさまだったそうな。
とにかく、思い付いたことの善悪も考えず、思いついたらすぐに口にする、そんなことを繰り返す人なんじゃ。そしてある時、村対抗の蹴球ゲームをすることになった。しかも、その会場はトラちゃんが住んでいる村とその北側にある村、そして南側にある村、の3つの村に分散して会場を設置することになったそうな。
一次予選リーグは、さほどの波乱もなく(ちょっと、審判の資質に問題はあるとはなったものの)無事に終了した。開催している3つの村の蹴球チームも順当に勝ち上がって、決勝リーグへと駒を進めたんじゃ。
決勝リーグも当初は、そんなに問題もなくゲームは進められていたんじゃ。しかし、トラちゃんの村のチームの選手が、決勝リーグの最中にレッドカードの反則を犯してしまい、一年間の出場停止となった。この選手はトラちゃん村のチームのエースであり、この線選手抜きには優勝は考えられない事態となったんじゃ。何としてでも自分の村が優勝してもらいたいトラちゃんは、いつもの癖で「ほしいものはすべて自分のもの」とばかりに、この全村対抗蹴球ゲームの主催者にいちゃもんをつけたんじゃ。そう、いつものように思いつきでな。
トラちゃんが主催者にどんな脅しをしたのか、懐柔策を提案したのか、どんな取引をしたのかは誰も知らん。なにがあったのかも、誰も知らん。それでも、翌日の蹴球ゲームの試合には、あのレッドカードの反則をした選手が、なにもなかったかのような顔をして出場していたのだけは事実じゃ。対戦相手のバイキング村のチームは、なぜそいつが出場しているのだと憤慨をした。
主催者は、レッドカードによる一年間の出場停止については猶予期間を設けたので、今回の試合には出場できると明言をした。あきらかに、何かの取引があったことは、誰の目にも明白なことだと思えた。しかし、主催者が猶予期間を設けたとしている限り、どうしようもないことであった。この処置に対して、バイキング村の選手の団結は非常に強くなったことは言うまでもない。実際に試合をしてみると、大差をもってバイキング村がトラちゃん村を破ったのじゃ。かのレッドカード反則男は、まったく精彩を欠いた動きで役には立たなんだそうじゃ。トラちゃんは優勝を目指していただけに、再度、主催者にトラちゃん村が勝ったことにしてくれと懇願したそうじゃが、それはあまりにも無理筋の話だったそうな。さすがのジャイアン=トラちゃんも、衆人環視の中で負けた試合をなかったことにして、勝ちということはできなんだ。
負けてしもうたことで、トラちゃんはすっかり興味をなくし、それ以降蹴球ゲームのことを言うことはなかったんだそうな。ただ、主催者はトラちゃんの脅しに屈したという事実だけは残ってしもうた。もう誰も、蹴球ゲームが公正で民主的なゲームとは感じなくなってしもうた。誰か強い人間が、「黒でも白と言えば白になる」強者の手慰みとしか認識されなくなったそうな。このあと、蹴球ゲームが再度人気のある競技になるのに、とてつもない時間を要したそうじゃ。この蹴球球技の主催者は公正とか中立的な立場の重要性が分かっておらなんだ、金の亡者だっただけじゃった。スポーツに金持ちの論理やら、政治的なメッセージを絡めるととんでもないことになるということを、トラちゃんが身をもって示してくれたんじゃ。もっとも、トラちゃん自身もあれだけ欲していた名声も、この一件を機に評判をガタ落ちに落としてしもうたんじゃ。その後は人々から、「横やりジィさま、横やりジィさま」と嘲り笑いの中で、ひとりひっそりと寂しい最晩年を送ることになってしもうたそうじゃ。めでたし、めでたし。






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